●ファーブルが発見した「社会性動物アリの仕事の分担」についてちょっと振り返ってみる。100頭のアリがいたとする、そのうちの20頭は、せっせと、実務的な全体の生活を支える仕事に邁進している。あとの80頭はというと・・・遊んでいるそうである。そして、まじめな20頭のありを取り除く(誘拐してしまう)と・・・残りの80頭のアリのうち、16頭がいなくなった20頭の仕事を始めるのである。
●経済の分野では、パレートの法則から派生する「8対2の法則」が有名で、原因とと結果の関係が不均等な一定の比率で観察される。たとえば、幾つか例を挙げてみると、@会社の社員のうちの20%が売り上げの80%を稼いでいる。Aある国では、人口の20%がその国のお金の80%を所有しているという。Bこのほか、自動車産業などの品質管理分野では、全体の改善点の中で、最も重要な20%の項目を改善することで、不具合や故障の80%をなくすことが出来るという。
●最近、いろんな人と関わる中で、物事の重要度を迅速に判断し最短距離で処理することの出来る人を見て、関心している。一方、私は、生活面や私生活では、すぐ寄り道してしまうタイプで、ちょっと興味がわくとどんどん脱線してしまうことが多い。ただし、不思議なことに、仕事の中でも特に農業技術開発に関しては、最短距離で進むことが出来るように思う。これはなぜだかよくわからないところであるが、一つ仮説がある。
●研究や技術開発には、かなりの面で、100頭中の80頭的な部分がある。一言で言えば効率が悪いし生産性も低い。しかし寄り道する分長い距離を移動することになるし、最短距離を進む場合よりも、より多くの物を見聞きできる。しかも興味を持って寄り道するので、その道のりを鮮明に覚えていることが多い。こうして、「寄り道型」スタイルは、多くのコンテンツを保有することがで来るのかもしれない。たとえは変わるが、一夜漬けでテスト勉強して、いい結果を残せる学生もいれば、人の何倍も努力していい結果を残せる学生もいる。前者では、用が終わった情報はすぐに忘れてしまうことが多いような気がする。エビングハウスの忘却曲線も関係しているのかもしれないが・・・こうした幾つかの観点から物を見ると、ある分野では「寄り道型」でも別の分野では「最短距離型」になりうるのではないか考えられるのである(これが私の仮説である)。
●ここが、人が集まることでおもしろくなるポイントである。多様な人材が集まって、その力を気持ちよく出し合うことが出来れば、一人ではとうていなしえない結果を得ることが出来よう。ただし、一番気をつけなければならないことは、オールマイティーに何でも出来る人は、全部自分でやってしまうこと。これは、限りある1人の仕事量の中で色々とこなすことでどれも中途半端になってしまうし、いくら寝ないで頑張っても人の2倍くらいの仕事をするのが精々であろう。「3人寄れば文殊の知恵」というが、私は、3人集まれば10人分以上の仕事が出来ると思う。
●複数の人が力を合わせる上で大切なこと、それは、自分の強みと弱みをしっかり把握して強みを伸ばし弱い点を仲間に補って貰うことだと思いう。もし、弱みのない人間がいるとしたら、それは、自分の弱みを認識していないだけであろう。強みと弱みの両面を認識して、自他共に受け入れることで本当の信頼関係も生まれるように思う。チームの価値、それは、多様性の中から生まれると信じている。
●私が組織でやりたいこと、それは、数少ない物差しで順位をつけることでなく、メンバーの個性の数だけの物差しを準備すること。そして、すべての仲間が、楽しくワクワク出来る環境で仕事に取り組める環境を作ることである。長期的には、つらいことでも、短期間で幾つかに区切ってチームで力を合わせて処理すれば、それは達成感につながり、楽しくもなりうる。
●人生、自分に正直に好きなことをとことんやった者が最後は一番幸せなのだと思う。そんな人を幸せに出来る職場があったら良いなと思う。そんな職場を作ってみたいとも思う。