二戸正氏は、徹底した合理主義者である。それは、米づくりが単なる趣味や惰性で行うものではなく、戦略を持った農業経営の視点から米づくりを実践しているからである。二戸氏は、稲作における水管理についてこう説明する。
●水田への入水は、夕方から朝にかけて行い、落昼に落水する。田圃に入って、長靴の跡がつくうちは水を入れる必要はない。
●植物の根には水根と気根があり、環境によって根の形態が大きく変化する。湛水状態では水根となり、落水した状態では、気根が発達する。根の表面積が多い気根が、養分吸収力の面で水根よりも優れると考えられる。
●従って、施肥利用効率を高めるには、気根を多く発達させることが有効であり、「夜入水して昼に落水、その後は、足跡が付かなくなるまで乾かす」の繰り返しにより、気根の能力を最大限に引き出すことで肥料を多く吸収させることが出来る。具体的には、出穂の40〜45日前からこの水管理をすることで、無効分けつが少なくかつ収量性の高い株に育てることが出来るのである。