●ジャグロンズが、本格的にIT(情報技術)活用に取り組んだのは、元コンサル業界人の馬野氏が在籍していた時に遡る。私の理想とする形を馬野氏がことごとく数値化して見える化する画期的なものだった。しかし、あまりにもやり過ぎたため、私自身がIT酔いしてしまった結果、目的を失ってしまった。苦い経験であった。数人しかスタッフがいないのに、1日に数回ミーティングしてはその記録を残す。そんなことをしていたのだから、ある意味大企業病もどきにかかってしまったようなもの。あの頃を懐かしく思い出す。
●とは言っても、IT活用に全く否定的なのも問題がある。農業に取り組む人の中には、情報技術の活用に後ろ向きな人も少なくはない。「まあまあ、これくらいでいいじゃないか」とか、徹底的に技術を追求する姿勢がない人に多いような気がするが、将来の日本の農業を考えると問題だ。例えば、ほうれん草の苗作りを勉強したいと私に聞きに来ても、メモを取らないのは問題ありだ。メモをとらなくて済むのは、ある程度極めた人で私の話を聞く前から8割以上内容をすでに知っている人だけである。古典的ではあるが、メモ帳とペンも立派なITの一つである。
●少し話は変わるが、ジャグロンズのフラッグシップ農産物はほうれん草である。しかし、このほうれん草、作物としては曲者(クセモノ)である。収穫ができるまでほうれん草が生育したとしても、ビジネスとして考えるとそれは山登りで言えば2合目程度、頂上までは程遠いのである。以前、収穫しきれないほうれん草を、知り合いの農家に自由に取って売ってもいいよと提案したら、収穫したあとの売上の半分を、私にくれたことがあった。しかしそれ以降は、ほうれん草を取りに来ることはなかった。実は、ほうれん草、収穫調整作業が、農作業の大半を占めるのである。収穫調整を制するのもがほうれん草ビジネスを制するといっても過言ではない。だから、収穫調整した農家さんは少なくても8割程度は貰わないとあわないと思うのである。
●さて、昨年の師走、ブログを休んで私はある問題に取り組んでいた。現在、7人前後のスタッフで収穫調整作業を行っているが、4人で作業した時の出荷量を100としたとき、8人で作業した時の出荷量が150というデータに出くわした。これは一大事、人が多くなることで生産性が25%ダウンしてしまうのである。このことに対しては、スタッフ全員に詳細を説明し、年末3週間の移行期間を経て、新年の今日から従量制の支払いシステムに変更した。これにより、作業スタッフの作業特性を把握でき、比較優位を活かした適材適所の作業分担が可能になると考えている。新しい試みは始まったばかりだが、これまでブラックボックスだった部分をガラス張りにすることになり、目に見える成果が上がることになるだろう。
●新年からの新しいシステムの運用には、必須のIT活用、かつての馬野スタイルを引き継いでいる担当の中村が、手堅く情報を処理してくれている。人は代わっても、その仕事の足あとが残り、会社の力として生かされ続ける。それが会社の素晴らしいところである。まだまだの部分が多いジャグロンズではあるが、問題にぶつかり、それを超えてゆく力がジャグロンズにはある。今年の躍進を見ていただけたら幸いである。