●先日、生産者の方からお電話をいただいた。初めてお話しする方である。60年間有機栽培を実践しているのだそうである。おきまりの質問「どんな種を使っているんだ」から始まり、そして、「あなたはなにをやりたいんだ、考えを聞きたい」という。困った。どう対応したらいいのかわからない。自分の考えをぶつけてみた。僕のものづくりは、特定の農薬や肥料を否定するものではないし、ジャグロンズ農法は、既存の概念にとらわれない「数値に基づく科学的農法」を目指している。絶対農薬を使わなければ野菜は作れないとは思わないし、化学肥料が悪の枢軸とも思わない。
●先方は、「少しでも化学肥料を使うことが問題だ」という。生産者である自分が安心して食べられる自信があればそれで十分であり、それに十分な科学的な裏付けがあったら消費者のみなさんはよりいっそう安心して農作物を食べることが出来るはずだ。
●先方は、こう続けた。「うちが出荷している○○ホテルはレベルが高い。うちはレベルの低い▽▽には絶対に出荷しない・・・」等々。僕は、おかしいと思った。「お客様を選んでいいものか?」と、益荒男ほうれん草は、出荷先を選んでいない。値段の関係で、取引が成立しないお客様があるだけである。どんな高級なホテルであろうが、町の小さなスーパーであろうが、同じ条件で取り引きしていただけるのならば、全く同じお客様である。
●さらに先方は、こう続けた。「私は、売り先は苦労しなくてもよいほど持っている。あんたのほうれん草を全量買い取りしてあげてもいい。」と・・・。
●大きなお世話である。「技術を全部教えてほしい。挙げ句の果てには全部買い取ってやってもいい。」生産者なら、自分のものが全部売れたらそれでいいではないか?常に多くの在庫を抱えて、その中からお客様に一番合ったほうれん草を出荷するのがジャグロンズのスタイル。全量買い取りの裏には、危険な香りが漂っている。うまい話には必ず裏がある。気をつけなくてはいけない。今、自分がすべきことは、よいものを作って、お客様に情報を発信するという地道な活動を一つ一つこなしてゆくことである。
●最後に、おかげさまで、私たちの作る「益荒男ほうれん草」は、首都圏を始め、三重県内でも、売り場でもっとも高価なほうれん草の一つとして、評価をいただいている。たかがほうれん草、されどほうれん草。生活者のみなさんには、ちょっと贅沢な食材として「益荒男ほうれん草」を選んでいただけたら幸いである。