●農業研修の場面で、理想の成果を上げるには、単に作業をまねすることだけでなく、教える側、教わる側共に、頭を使うことが不可欠である。
●現在、私を含めたジャグロンズの常駐スタッフ3名のうち、1名(A君)は、「農の雇用事業」という、国の農業支援システムを受けながら農業の現場で活躍できる人材になるために頑張っている。
●A君は、ジャグロンズにやってきて2年目半ばを迎えるが、1年目は、とにかく全部が空回りで、雇用する側からすると使い物にならなかった。しかし、1年で、できることも増え、現在の安定したジャグロンズの活動を支える重要なメンバーの一人に育ちつつある。
●彼の良さは、農業で生きていくことを決意していること。こつこつ地道に作業をこなす忍耐力があること。一方、スタッフとしての特徴は、作業を覚えるのに多くの時間を要すること。教える側にも覚悟が必要である。
●今日も、台風対策の仕事をさせてみたが、毎日のルーチンワークでないため、なかなか私の指示する仕事ができない。そこで、予定していた私の仕事を取りやめて、ワンツーマンで、仕事を教えた。説明だけではなかなかできないので、まず私が見本を見せる。そして、同じことをA君にさせてみる。その結果を踏まえて、A君と私の作業に違いがあればその相違点を説明し、作業技術を改善させる。そんなこんなで、今日は、1日が過ぎていった。研修現場では、2人で1.3〜1.5人分ぐらいの仕事しか進まない。ある意味投資である。
●研修は、「教える側」と「教える側」で成り立つ。私自身教えることで、多くのことに気づくことができる。研修の営みが行われる農場は、「農業道」を志す研修生の道場であるが、教える側にしても同じことがいえる。
●私は、初めての事例として、現在の研修制度を実験的に取り組んでいるので、多くのメリットを感じている。A君に対する今回の取り組みにより、大きな成果があがれば、それ以上のことはない。私は、全力を尽くす覚悟でこの研修制度に取り組んでいるが、万が一、思うように成果が上がらなかった場合、私は2度と同じことを繰り返さない。だから、次からA君と同じタイプの人材は決して採用しない。
●私の当初の予定を変更して行った今日のA君に対する私の研修対応は、A君に対する投資のように見えて実はそうではない。私自身への投資として取り組んだものだ。
●だから、A君がただ受け身で研修を受けてもただその日1日が過ぎるだけの話である。今日のA君と明日のA君は、何にも変わらない。すなわち、研修生の立場で進歩がないということである。それは、責任ある仕事や、少し高度な仕事をを与えた場合、会社での時間を無駄遣いする人材であることを意味する。
●このことを肝に銘じて、A君には、常に緊張感を持って、これからも自助の精神で研修に向き合い、今日の進歩をしっかり「現場ノート」に残し、力を付けていって欲しいと思う。
●「農業道」の道場を自任するジャグロンズでは、研修を受け入れる側も受ける側も、常に「ガチンコ(真剣勝負)」で取り組まなければならない。